工場の自動化(FA)に取り組みたいが、「進め方がわからない」「メリットや事例を知りたい」とお考えではないでしょうか。
本記事では、工場自動化が求められている背景や実際の自動化の進め方を解説します。さらに工場の自動化のよくある失敗や成功させるコツについてもファクトリーオートメーション化のプロが徹底解説します。
工場自動化を進めたい・生産工程の自動化をしたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。
\ 話を聞いてみたいだけでもOK /
なぜ今、工場自動化が求められているのか?

人手不足やコストの上昇、品質維持の難しさなど、製造業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。これまでのやり方では立ち行かなくなる現場も増えており、今まさに大きな転換期に差しかかっていると言えます。
では、具体的にどのような課題や情勢が工場自動化を後押ししているのでしょうか。まずは現場が直面している現実から見ていきましょう。
製造現場の課題が深刻化している(人手不足・コスト高騰・品質のばらつき)
現在、製造業では人手不足が深刻化しており、高齢化や若手の減少により労働力の確保が難しくなっています。経済産業省の調査によると、製造業の従事者は2002年の約1,200万人から、2023年にはおよそ1,055万人に減少しました。全産業に占める割合も19%から15%台に落ち込み、減少傾向が続いています。
加えて、原材料や人件費の高騰が利益を圧迫し、現場には少人数で高い生産性を求められる状況です。さらに、熟練者の勘や経験に頼った作業では品質にばらつきが出やすく、製品の安定供給にも支障が出ます。
こうした課題を乗り越えるには、人に依存せず、再現性のあるプロセスを構築できる自動化が不可欠です。労働力不足の穴を埋めつつ、品質とコストの安定化を実現する手段として、いま製造業で自動化が求められています。
技術の進化で中小企業でも工場の自動化が現実的になっている
以前は自動化というと大企業向けの投資という印象がありましたが、近年は技術の進化により中小企業でも現実的な選択肢となっています。協働ロボットやAI画像検査、IoTツールなどの価格が下がり、月額制やレンタル型の導入も広がっています。
また、当社(BRICS)がおこなっているロボットSIerによる一括支援サービスを活用すれば、導入から保守までを任せることができます。
さらにものづくり補助金や中小企業省力化投資補助金など自動化関連の支援制度が拡充され、初期負担を抑えやすくなっています。
こうした背景から、「まず1工程から試してみる」という形で、小規模な中小企業の工場でも効果的な自動化に踏み出す企業が増えています。
「工場の自動化とは何なのか」について詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてください。
工場の自動化とは?メリット・課題・成功事例・進め方を徹底解説
製造業・工場の自動化の対象を見極めるための準備

工場の自動化は、やみくもに設備を導入すれば成功するわけではありません。まずは「どこを」「なぜ」自動化すべきかを見極める準備が欠かせません。自動化対象の選定を誤ると、投資対効果が得られなかったり、現場で活用されなかったりするリスクがあります。
ここでは、自動化を成功に導くための“事前準備”を解説します。具体的にやるべきことは以下の通りです。
- 工程の見える化と課題の洗い出し
- 自動化の目的を明確にする(生産性向上や安全性など)
それぞれ見ていきましょう。
工程の見える化と課題の洗い出し
自動化を進めるうえで、まず必要なのが「工程の見える化」と「課題の洗い出し」です。工程ごとの作業内容や手間、時間、人員配置を可視化することで、どの部分にムダや属人化があるかが明らかになります。ここで重要なのは、現場の声を丁寧に拾い上げることです。
机上の計算だけでなく、実際に働いている人の感覚を取り入れることで、導入後に「使われない自動化」になるのを防げます。現状把握の精度が高ければ高いほど、自動化の効果も出やすくなります。
自動化の目的を明確にする(生産性向上や安全性など)
自動化を導入する際は、「何のために自動化するのか?」という目的を明確にすることが重要です。生産性を上げたいのか、安全性を確保したいのか、人手不足への対策なのかによって、選ぶ技術や導入範囲は大きく変わります。
目的が曖昧なままでは、導入後に「思ったような効果が出ない」といった事態になりかねません。例えば、安全性が目的なら危険作業の自動化を優先し、生産性が目的ならボトルネック工程の効率化が有効です。明確なゴール設定は、社内の意思統一にもつながり、プロジェクトを円滑に進める土台となります。
工場自動化の進め方【6つのステップ】

実際に工場を自動化する際の手順・進め方について解説します。具体的には以下の通りです。
- 現状の課題を整理する
- 自動化対象の工程を選定する
- 適切な技術・設備・ロボットを選ぶ
- 試験導入で効果検証する
- 本格導入と社内運用体制を整える
- 自動化の範囲を拡大・改善する
それぞれ1つずつ見ていきましょう。
現状の課題を整理する
自動化を検討する際は、まず現場の「課題の見える化」が欠かせません。人手不足や品質のばらつき、工程間のムダ、属人化している作業など、日々の業務の中に潜む非効率を具体的に洗い出します。
特に、生産性の低い工程やミスの多い作業は優先的に確認したいポイントです。現場のスタッフの声もヒントになります。課題が明確になることで、自動化によって「何を解決したいのか」が見えてきます。ここを曖昧にしたまま進めると、導入後に思ったほどの効果が出ない原因にもなります。的確なスタートを切るための第一歩が、課題整理です。
自動化対象の工程を選定する
課題が整理できたら、次は「どの工程を自動化するか」を決めます。すべての作業を一度に自動化するのは現実的ではないため、対象を選別する必要があります。
単純作業、繰り返しが多い作業、ミスが多い工程などは自動化しやすく、導入効果も見込めます。反対に、複雑すぎる作業や属人性が強い工程は後回しにするのが基本です。
まずは取り組みやすい工程から始めることで、現場に成功の感覚を根づかせることができ、全体展開への弾みとなるでしょう。
費用対効果の観点からも、早期に成果が出る工程を選ぶことで、社内の理解と自動化ノウハウの蓄積にもつながります。
適切な技術・設備・ロボットを選ぶ
自動化の対象が決まったら、次に重要なのが「どの技術や設備を使うか」の選定です。目的に応じて選ぶべき機器は変わります。
例えば、単純な繰り返し作業なら産業用ロボット・協働ロボット、検査工程ならAIカメラや画像処理システムなどが有効です。また、近年はノーコードで操作できる機器や、クラウド連携が可能なIoTツールなど、使いやすくて高機能な選択肢も増えています。
自社でいきなりツールや設備を導入を決定するのではなく、まずは自動化のプロに相談することで、失敗を防げます。BRICSでは工場の自動化にまつわる無料相談を実施中です。
累計で200社以上の工場自動化の支援をおこなってきたBRICSにぜひお気軽にお問い合わせください。
\ 話を聞いてみたいだけでもOK /
試験導入で効果検証する
いきなり本格導入するのではなく、まずは小さな範囲で「試験導入(PoC)」を行うことが重要です。導入前に現場へ丁寧な説明を行い、操作や安全面の教育も行っておきましょう。特に現場ベテランが不安を感じないよう配慮することで、スムーズな受け入れにつながります。
試験期間中は、稼働率や不良品率などの数値をモニタリングし、目的に対してどれだけ効果があったかを検証します。このステップを踏むことで、本格導入に向けたリスクを最小限に抑えられ、改善点も早期に把握できます。
本格導入と社内運用体制を整える
試験導入で効果が確認できたら、本格導入へと進みます。この際、単に設備を入れるだけでなく「運用体制の整備」が不可欠です。操作マニュアルの作成や、教育体制の構築、メンテナンス手順の確立など、社内に自動化を定着させるための仕組みが求められます。
また、導入前に設定したKPI(生産性・不良率など)を基に、継続的に成果を測定することも重要です。導入して終わりではなく、継続して使われる仕組みへ落とし込むことが、自動化の“成功”と言えます。
自動化の範囲を拡大・改善する
自動化を一工程で終わらせるのではなく、成功事例をもとに他の工程にも広げていくのが次のステップです。いきなり大規模展開するのではなく、小さく始めて徐々に広げる“段階的アプローチ”が理想です。
拡大の際には、工程同士の連携やデータ共有の整合性も意識しながら進めることが大切です。また、設備に合わせて作業フローを再設計するなど、改善を同時に進めると効果がより高まります。導入後もPDCAを繰り返し、現場の実態に合わせた運用を目指しましょう。
導入は難しい?自動化で失敗しやすいポイントとその対策

工場の自動化で失敗しやすいポイントとしては以下が挙げられます。
- 現場と連携しないまま導入してしまう
- 「使えないシステム」を高額導入する
- 効果検証の視点がなくROIが見えない
- 全てをいきなり自動化しようとしてしまう
- 現場の人間の育成ができていない
それぞれ1つずつ解説していきます。
現場と連携しないまま導入してしまう
自動化の導入において最もよくある失敗は、現場の声を聞かずにシステムを決めてしまうことです。管理部門や経営層が設備の選定を主導し、現場の運用や手順を無視したまま導入すると、使いにくさや混乱が生まれ、結局使われなくなることもあります。
自動化の成否は、導入後に“現場で実際に回るか”にかかっています。そのため、設計段階から現場担当者を巻き込み、現実的な運用フローをすり合わせておくことが不可欠です。机上の計画よりも、現場との対話こそが成功の近道です。
「使えないシステム」を高額導入する
高価で高機能なシステムを導入したものの、現場で活用されないまま放置されてしまう。これは、導入時によく見られる“機能過多”の失敗パターンです。現場のニーズよりもカタログスペックを重視してしまい、「本当に必要な機能は何か」という本質が見えなくなっているのが原因です。
工場自動化では、必要な課題にしっかりと対応できる“実用的なシステム”を選ぶことが何より重要です。まずは最小限の機能から試し、現場との適合を確認しながら段階的に機能を拡張していく方法が効果的です。華やかな機能に惑わされず、「現場で本当に使われるか」を軸に判断することが、自動化を失敗させないための基本です。
効果検証の視点がなくROIが見えない
せっかく自動化を導入しても、「効果が出ているか分からない」という状態では社内の評価も進まず、次の投資判断ができません。この原因は、導入前にKPIや目標数値を設定していないことにあります。
自動化の成果は“稼働率”や“工数削減率”、“不良率の変化”などで具体的に見える化すべきです。また、月次や四半期ごとにデータを比較・分析することで、ROI(投資対効果)の妥当性も判断できます。自動化は入れて終わりではなく、成果を示して初めて意味を持ちます。
全てをいきなり自動化しようとしてしまう
最初から全工程を一気に自動化しようとすると、費用も工数も膨らみ、想定以上にリスクが高くなります。技術的なハードルや現場とのミスマッチに直面し、「結局使われない」システムになってしまうことも少なくありません。
特に中小企業では、限られたリソースの中での導入になるため、無理のあるスケジュールや規模は避けるべきです。まずは自動化しやすい工程から着手し、小さな成功体験を積み重ねていく「スモールスタート」が有効です。段階的に展開することで、現場の理解・技術習得も進み、安定した自動化が実現できます。
現場の人間の育成ができていない
せっかく自動化設備を導入しても、ロボットやソフトウェアを操作・保守できる人材が現場にいなければ、本来の効果は発揮されません。むしろ、操作ミスやトラブル対応に時間がかかり、導入前よりも生産性が落ちてしまうケースすらあります。特定の担当者にしか扱えない状態では、属人化によるリスクも高まります。
安定稼働を実現するには、導入前から教育やOJTで運用スキルを育てる体制づくりが不可欠です。導入した仕組みを現場が正しく運用できてこそ、自動化のメリットが活きてきます。
生産ライン自動化で見逃しがちな「見えない工程」もチェック

自動化を進めるうえで見逃されがちなのが、作業者が日常的にこなしている“当たり前”の作業です。いわゆる「見えない工程」です。
例えば、部品や工具の持ち運び、検査結果の記録、パソコンへのデータ入力など、一つひとつは単純に見える工程も、積み重なると大きな工数やミスの温床になっていることがあります。これらは自動化の対象として認識されにくいため、導入後に「まだ人手が足りない」と感じる原因になることもあります。
対策としては、動画撮影や作業時間の記録、現場スタッフへのヒアリングが有効です。こうした“見えにくいムダ”に気づけるかどうかが、全体最適な自動化への鍵となります。
工場自動化の成功させる3つのポイント

工場自動化の成功させる3つのポイントは以下の通りです。
- 小さく始めて横展開する「スモールスタート」
- 社員の理解と巻き込みを前提とした運用体制づくり
- 外部の業者ごとの責任範囲を明確にする
詳しく見ていきましょう。
小さく始めて横展開する「スモールスタート」
自動化は一気に大規模導入するより、まずは影響範囲の狭い工程で小さく試すほうが成功率が高まります。小規模導入なら費用とリスクを抑えながら効果検証が容易になり、想定外のトラブルも最小限にとどめられます。
初期フェーズで得たデータをもとに PDCA を回し、効果が確認できたら隣接工程へ横展開する。この段階的アプローチが自動化ノウハウの蓄積と社内合意形成をスムーズにし、結果として投資回収期間の短縮にもつながります。
社員の理解と巻き込みを前提とした運用体制づくり
自動化設備は導入して終わりではなく、現場で“使われ続ける”ことが成果の条件です。そこで欠かせないのが社員を巻き込んだ運用体制づくりです。検討段階から現場リーダーを交え、目的とメリットを共有しながら仕様を決定することで抵抗感を減らせます。
導入前後には操作研修や安全教育を実施し、トラブル時の判断基準も明文化。現場が主体的に運用できる仕組みを整えることで定着率が上がり、設備稼働率とROIが最大化します。
自動化に関わる外部業者ごとの責任範囲を明確にする
自動化プロジェクトには、ロボット本体や搬送装置、制御ソフトウェアなど、複数のベンダーが関わるのが一般的です。しかし、それぞれの業者がどこまでを担当するのかが曖昧なままだと、納期遅れやトラブル時の責任の押し付け合いが発生し、導入後の混乱につながる恐れがあります。
その点、当社ではロボットや設備機器といったハードウェアはもちろん、ソフトウェア設計、制御、現地での据付・配線工事までを一括して担える体制を整えています。各工程を切り分けずに一元管理することで、進行中の連携ミスや保守時のたらい回しを防ぎ、スムーズな導入・安定稼働を実現します。
複数業者を調整する手間が省けるだけでなく、導入後の改善や拡張にも柔軟に対応できるのが、ワンストップで対応可能な当社の強みです。ぜひお気軽にお問い合わせください。
工場・生産工程の自動化にお困りならロボットSIerのBRICSにお任せ

工場を自動化したい・オートメーション化したいとお悩みの方は、ぜひロボットシステムインテグレータのBRICSにお任せください。
BRICSでは累計200社以上の工場自動化の支援をおこなってきました。ハードウェアエンジニアとソフトウェアエンジニアの両方が在籍しているため、お客様の現状の課題に合わせた、自動化支援が可能です。
無料相談を受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
\ 話を聞いてみたいだけでもOK /
工場の自動化の進め方に関するよくある質問

工場自動化・ファクトリーオートメーション(FA)の進め方に興味のある方がよく抱く疑問にお答えします。
工場で自動化できる仕事は?
工場内で自動化が実現しやすいのは、手順が決まっていて繰り返し行われるような単純作業や、肉体的な負担が大きい業務です。例えば、部品の運搬や供給、ボルトの締め付け、溶接、検品、そして梱包といった工程は、ロボットや専用の自動化装置を導入することで効率化が図れます。
近年では、外観検査の分野でもAIカメラや画像処理技術が用いられるケースが増えています。ただし、職人の判断や感覚に頼る工程、状況に応じた判断が求められる作業は、依然として人の手による対応が欠かせません。自動化を検討する際には、その工程がマニュアル化や数値化が可能かどうかが、大きな判断材料となります。
工場の自動化の成功事例は?
昼夜2交替で14名が対応していたアルミダイキャストの製造ラインに対し、当社が自動化の導入支援を行いました。
導入前は、作業員不足でラインが安定せず、製品品質にもばらつきが生じていました。自動化を進めた結果、14人必要だった工程が完全無人化へ移行。人手確保の悩みが解消されただけでなく、品質を一定に保ちながら高効率でフレキシブルな生産体制を実現できました。
イメージ動画は以下の通りです。
工場自動化・ファクトリーオートメーションで有名な企業は?
工場自動化(ファクトリーオートメーション)の分野では、世界中に多くの有力企業が存在します。日本では、三菱電機・オムロン・キーエンス・ファナックといったメーカーが、自動化機器や制御技術で国内外の工場に大きく貢献しています。これらの企業はPLCやセンサー、ロボット、IoT連携システムなどで高い技術力を持ち、省人化・省力化を支えています。
一方、海外でもシーメンス(独)、ABB(スイス)、ロックウェル・オートメーション(米)などが世界的なリーダー企業として知られ、制御機器や産業用ソフトウェア、スマートファクトリー構築で存在感を発揮しています。
以下の図に、工場自動化(ファクトリーオートメーション)で代表的な有名な企業と主な分野をまとめました。
分類 | 企業名 | 主な分野・特徴 |
日本企業 | 三菱電機 | PLC、インバータ、ロボット、IoT連携 |
オムロン | センサー、AI・画像処理、自動検査機器 | |
ファナック | CNC、ロボット、自社IoTプラットフォーム | |
安川電機 | ロボット、サーボモータ | |
キーエンス | 非接触測定センサー、高速画像検査機器 | |
海外企業 | Siemens(独) | 工場全体の自動化ソリューション |
ABB(スイス) | ロボット、制御システム | |
Rockwell Automation(米) | 制御ソフトウェア、デジタルツインなど |
工場の自動化の進め方に関するまとめ
本記事では、製造業における工場自動化の必要性と、その進め方について解説しました。
人手不足やコスト上昇、品質のばらつきといった課題が深刻化する中、自動化は再現性と効率を両立する有効な手段です。
成功のポイントは、工程の見える化と目的の明確化、段階的な導入と現場の巻き込みにあります。補助金や最新技術の活用により、中小企業でも無理なく導入可能です。まずは小さく始めて、自社に合った改善策を見つけていきましょう。